ベンチプレスが恥ずかしい。実は周囲は気にしていません

ジムで人のベンチプレスを見るのは、ものすごく強い人か、限界ギリギリの人か。この2つだけです。未経験男性の平均は46kg、バーだけでもその4割を超えています。恥ずかしがる理由はありません。

LIFE IS FIT2026年10月約8分で読めます

ベンチプレスをやってみたい。でも、バーだけ(20kg)しか挙がらない。 30kgを持っているところを人に見られるのが嫌で、ベンチの前を素通りしてしまう。

そういう方に向けて書いています。

結論から書きます。恥ずかしがる必要は、ひとつもありません。

ただ、それだけ言われても納得できないと思います。 なので、ジムで人が何を見ているのかを、中にいる側から書きます。

そして後半では、「ケツを上げるのはなぜダメなのか」という話をします。 調べても「ダメです」としか出てこないところですが、理由はちゃんとあります。


ジムで他人のベンチプレスを見るのは、2つの場面だけです

私もジムで、人のベンチプレスを見ることがあります。 でも、見るときは決まって2種類の人です。

① ものすごく強い人

「すごいなあ」。それだけです。それ以上は何も考えていません。

② 限界ギリギリの人

高重量を挙げきるか、潰れるか、という場面です。 万が一のときに補助へ入れるようにという気持ちと、「頑張れ」という気持ち。 見ている理由は、この2つです。

ここが大事なところです。 初心者の、危険の伴わないフェーズのトレーニングは、私の視界に入っていません。

見ていない、という話ではありません。 見るときに頭の中にあるのが、この2つしかないということです。 軽い重量で安全に動いている人を、評価したり笑ったりする枠が、私にはありません。

私だけが特別ではないと思います。 ジムで真剣にやっている人ほど、自分のセットのことで頭がいっぱいです。

※心理学にはスポットライト効果という言葉があり、人は自分が注目されている度合いを実際より大きく見積もる傾向があるとされています(Gilovich, Medvec & Savitsky 2000・Journal of Personality and Social Psychology 78巻2号)。

スミスマシンでベンチプレスをしているところ

だから、もくもくとやってください。 たとえバーだけでも、素晴らしいトレーニングです。

そもそも、その重量は恥ずかしい水準ではありません

気持ちの話だけでは終わらせません。実際に測ったデータがあります。

体育学研究 54巻1号(2009年)で、 筋力トレーニング経験のない大学生103名のベンチプレスを実測したところ、 こうなっていました。

体重 ベンチプレス1RM
男性 67名 61kg 46kg
女性 36名 51kg 22kg

ここから計算してみます。

未経験男性の平均46kgに対して
バーだけ(20kg) 43%
30kg 65%
40kg 87%

バーだけでも、未経験男性の平均の4割を超えています。 恥ずかしい数字ではありません。

そして女性の平均は22kg。つまりバー(20kg)がほぼ平均です。 女性で「バーだけしか挙がらない」のは、平均そのものということになります。

※何キロが普通なのかを詳しく知りたい方は、ベンチプレス40kgがキツくて当然。「平均は体重と同じ」の嘘に書きました。ネットでよく見る「平均は体重と同じ」が、どこから来た数字なのかも説明しています。

むしろ、バーから始めるのが正しい順番です

軽い重量から始めるのは、遠慮ではなく、正しい手順です。

私のところでも、未経験の方の初回は、私がすぐ横についた状態で、みなさんバーだけから始めます。 そして最初は、そのバーだけでもぐらぐら揺れる方が多いです。10回がきついという方も、珍しくありません。

バーだけで揺れるのは、始めたばかりの方の多くが通る姿です。 筋肉が足りないからというより、慣れない動きに、身体がまだ追いついていないだけです。 それも2〜3回目のセッションになると、ほとんどの方が、落ち着いて10回くらい挙げられるようになります。

※私のところの会員さんを見てきた経験です。個人差があります。

プレートを付けないバーだけで、ベンチプレスをしているところ

最初の数週間で伸びるのは、筋肉の大きさではありません。 脳と神経が、その動きを覚える段階です。

※さきほどの研究でも、週1回を7〜10週間続けたあと、挙がる重さは増えたのに大腿と上腕の太さは有意に変わっていませんでした。詳しくは2本目の記事に書いています。

だからこの時期に重い重量を持つと、覚える前のフォームが固まります。 軽いうちにしか直せません。

だから、バーで始める人は急がば回れを選べている人です。

フリーウェイトエリアは、入っていい場所です

ラックでバーベルを担いでいるところ。後ろから見ても、誰も気にしていない

ダンベルやバーベルが並んでいるエリアに、入りにくさを感じる方は多いと思います。 恥ずかしさでベンチプレスを避ける理由の、かなりの部分がここだと思っています。

私から言えることは、ひとつです。

私が見てきた限り、上級者は初心者を応援しています。

「ようこそ、筋トレの世界へ」 と思っています。 新しく入ってきた人を笑う理由が、本当にありません。 自分も同じところから始めているからです。

だから、恥ずかしさは置いて、どんどん挑戦してほしいと思っています。

ダンベルを使ったプレス。ベンチプレス以外のフリーウェイト種目

ただし、ひとつだけ条件があります。

フリーウェイトを扱うときは、正しいフォームを覚えてからにしてください。 マシンと違って軌道が決まっていないぶん、怪我のリスクが高い種目です。 応援はしますが、安全だけは譲れません。

一人で始めるなら、最初はマシンやスミスマシンでフォームを作って、そこからフリーウェイトへ移る。 遠回りに見えて、これが一番早い順番です。

ここからが本題です。「ケツを上げるのはなぜダメ」なのか

ベンチプレスを始めると、必ずどこかでこれを言われます。 または、ネットで見かけます。

調べても「ダメです」「フォームが崩れています」としか出てこないので、 理由から書きます。ダメと言われるのには、ちゃんと理由が2つあります。

理由1 腰を痛めやすい

尻を浮かせると、腰の反りが強くなります。 反りすぎた状態で重い重量を支えると、腰を痛めやすくなります。

腰は、一度痛めると長く残ります。

※消費者安全調査委員会が2026年5月に出した報告書には、パーソナルトレーニングに関する事故が196件(2019年1月〜2025年12月)記録されています。腰椎の圧迫骨折の事例も載っていますが、報告書に載っているのはバーベルを持ってスクワットをしていた60歳代の例で、ベンチプレスの事故ではありません。同じ報告書に「ベンチプレス」という言葉は出てきません。トレーニング全般で腰を痛める事故が起きている、という話として読んでください。

理由2 大胸筋に負荷が乗りにくい

もうひとつは、効果の話です。 尻を浮かせるとバーの移動距離が短くなり、肩や脚で押す形になります。 重い重量が挙がったように見えて、狙っている大胸筋には乗っていません。

胸を大きくしたくてベンチプレスをしているのに、胸に効かない。 これでは本末転倒です。

「失格になる」のは、競技の話です

もうひとつ、知っておくと見え方が変わることがあります。

競技としてのベンチプレスでは、尻が浮くと失敗になります。 試技の開始前に、審判が頭・肩・尻がベンチについているか、 足裏が床についているかを確認してからコールがかかります。 だから競技者は尻の浮きに厳しい。ルールがあるからです。

※日本パワーリフティング協会など、国内競技団体のルール解説より。

ここが大事なところです。 あなたは、試合に出ているわけではありません。

うちでは、多少のケツアゲは許容しています

私の考えを書きます。

関節に痛みがなく、胸に効いている実感があるなら、多少の尻の浮きは許容しています。

理由は単純で、若いうちは、重量が伸びること自体が楽しいからです。 その楽しさが、ジムに通い続ける力になります。

そこを全部取り上げて「フォームが完璧になるまで重量を上げるな」と言うのは、 続ける力を削ぐだけだと思っています。

※年齢を重ねてからは、関節と腰を優先してください。回復に時間がかかるぶん、一度痛めたときに失うものが大きくなります。

※腰の痛みが続く場合や、しびれがある場合は、自己判断せず整形外科を受診してください。ここに書いているのは運動の話で、診断や治療の話ではありません。

ただし、正しいフォームで重量を求めていくのが基本です。ここは譲りません。

どうするか
関節に痛みがない 多少は許容
胸に効いている実感がある 多少は許容
腰に違和感が出た 重量を下げる。例外なし
毎回そうなる フォームか重量が合っていない

そんなことより、ケツアゲ警察のほうが滑稽です

ここは、はっきり書きます。

ネットには他人のフォームを見つけては指摘して回る人がいます。 SNSでも、ジムでも。私は、そちらのほうが滑稽だと思っています。

試合に出ているわけでもない人の、尻が数センチ浮いていることを、 わざわざ指摘して何になるのでしょうか。 その人は今日、ジムに来ています。それで十分です。

そして、指摘する側も、指摘される側も、同じことをしています。 他人を基準に、自分や誰かを測っている、ということです。

※ただし、危険を知らせる声かけは別です。 潰れそうなときに補助へ入る、腰が明らかに反りすぎているときに止める、といった声は、滑稽でも何でもありません。分かれ目は、その人が怪我をしそうかどうかです。試合でもない人の数センチを責めることとは、別のことです。

トレーニングは、いつでも自分との比較です

ケーブルで背中を引いているところ。周りではなく、自分の前回と比べる

人のことはいいんです。

見るべきなのは、先週の自分です。

バー(20kg)
先週 8回
今週 10回

これで十分に前進しています。 体重も見た目も変わっていなくても、神経が動きを覚えている最中なので、 見た目より先に、記録のほうに出てきます。

だから、重量と回数はメモしてください。 スマホのメモで構いません。 比べる相手が「先週の自分」になった瞬間に、周りの目は関係なくなります。

恥ずかしいと感じているのは、あなたが真剣だからです。 真剣でなければ、そもそも恥ずかしいとも思いません。 その真剣さは、記録に向けてください。


※写真はすべて当方で撮影したもので、写っている方の了解をいただいて掲載しています。

参考文献(4件)
  • 林直亨・宮本忠吉「週1回の大学授業における筋力トレーニングが筋力に与える影響」体育学研究54巻1号137-143(2009年)
  • Gilovich T, Medvec VH, Savitsky K. J Pers Soc Psychol 78(2):211-222(2000年)
  • 消費者安全調査委員会 報告書(2026年5月27日)
  • 競技ルールは日本パワーリフティング協会ほか国内競技団体の解説による
LIFE IS FIT

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