ベンチプレスをやってみたい。でも、バーだけ(20kg)しか挙がらない。 30kgを持っているところを人に見られるのが嫌で、ベンチの前を素通りしてしまう。
そういう方に向けて書いています。
結論から書きます。恥ずかしがる必要は、ひとつもありません。
ただ、それだけ言われても納得できないと思います。 なので、ジムで人が何を見ているのかを、中にいる側から書きます。
そして後半では、「ケツを上げるのはなぜダメなのか」という話をします。 調べても「ダメです」としか出てこないところですが、理由はちゃんとあります。
ジムで他人のベンチプレスを見るのは、2つの場面だけです
私もジムで、人のベンチプレスを見ることがあります。 でも、見るときは決まって2種類の人です。
① ものすごく強い人
「すごいなあ」。それだけです。それ以上は何も考えていません。
② 限界ギリギリの人
高重量を挙げきるか、潰れるか、という場面です。 万が一のときに補助へ入れるようにという気持ちと、「頑張れ」という気持ち。 見ている理由は、この2つです。
ここが大事なところです。 初心者の、危険の伴わないフェーズのトレーニングは、私の視界に入っていません。
見ていない、という話ではありません。 見るときに頭の中にあるのが、この2つしかないということです。 軽い重量で安全に動いている人を、評価したり笑ったりする枠が、私にはありません。
私だけが特別ではないと思います。 ジムで真剣にやっている人ほど、自分のセットのことで頭がいっぱいです。
※心理学にはスポットライト効果という言葉があり、人は自分が注目されている度合いを実際より大きく見積もる傾向があるとされています(Gilovich, Medvec & Savitsky 2000・Journal of Personality and Social Psychology 78巻2号)。

だから、もくもくとやってください。 たとえバーだけでも、素晴らしいトレーニングです。
そもそも、その重量は恥ずかしい水準ではありません
気持ちの話だけでは終わらせません。実際に測ったデータがあります。
体育学研究 54巻1号(2009年)で、 筋力トレーニング経験のない大学生103名のベンチプレスを実測したところ、 こうなっていました。
| 体重 | ベンチプレス1RM | |
|---|---|---|
| 男性 67名 | 61kg | 46kg |
| 女性 36名 | 51kg | 22kg |
ここから計算してみます。
| 未経験男性の平均46kgに対して | |
|---|---|
| バーだけ(20kg) | 43% |
| 30kg | 65% |
| 40kg | 87% |
バーだけでも、未経験男性の平均の4割を超えています。 恥ずかしい数字ではありません。
そして女性の平均は22kg。つまりバー(20kg)がほぼ平均です。 女性で「バーだけしか挙がらない」のは、平均そのものということになります。
※何キロが普通なのかを詳しく知りたい方は、ベンチプレス40kgがキツくて当然。「平均は体重と同じ」の嘘に書きました。ネットでよく見る「平均は体重と同じ」が、どこから来た数字なのかも説明しています。
むしろ、バーから始めるのが正しい順番です
軽い重量から始めるのは、遠慮ではなく、正しい手順です。
私のところでも、未経験の方の初回は、私がすぐ横についた状態で、みなさんバーだけから始めます。 そして最初は、そのバーだけでもぐらぐら揺れる方が多いです。10回がきついという方も、珍しくありません。
バーだけで揺れるのは、始めたばかりの方の多くが通る姿です。 筋肉が足りないからというより、慣れない動きに、身体がまだ追いついていないだけです。 それも2〜3回目のセッションになると、ほとんどの方が、落ち着いて10回くらい挙げられるようになります。
※私のところの会員さんを見てきた経験です。個人差があります。

最初の数週間で伸びるのは、筋肉の大きさではありません。 脳と神経が、その動きを覚える段階です。
※さきほどの研究でも、週1回を7〜10週間続けたあと、挙がる重さは増えたのに大腿と上腕の太さは有意に変わっていませんでした。詳しくは2本目の記事に書いています。
だからこの時期に重い重量を持つと、覚える前のフォームが固まります。 軽いうちにしか直せません。
だから、バーで始める人は急がば回れを選べている人です。
フリーウェイトエリアは、入っていい場所です

ダンベルやバーベルが並んでいるエリアに、入りにくさを感じる方は多いと思います。 恥ずかしさでベンチプレスを避ける理由の、かなりの部分がここだと思っています。
私から言えることは、ひとつです。
私が見てきた限り、上級者は初心者を応援しています。
「ようこそ、筋トレの世界へ」 と思っています。 新しく入ってきた人を笑う理由が、本当にありません。 自分も同じところから始めているからです。
だから、恥ずかしさは置いて、どんどん挑戦してほしいと思っています。

ただし、ひとつだけ条件があります。
フリーウェイトを扱うときは、正しいフォームを覚えてからにしてください。 マシンと違って軌道が決まっていないぶん、怪我のリスクが高い種目です。 応援はしますが、安全だけは譲れません。
一人で始めるなら、最初はマシンやスミスマシンでフォームを作って、そこからフリーウェイトへ移る。 遠回りに見えて、これが一番早い順番です。

