ベンチプレスを続けてきたのに、ここしばらく重量が止まっている。 フォームを見直せ、休め、と言われても、何をどう変えればいいのか分からない。
結論から書きます。 伸び悩んだら、最大重量に挑む回数を減らしてください。 代わりにやることは3つです。
- プログラムを組んで、練習の回数を増やす
- 正しいフォームを習う(癖がつく前なら、早いほどいい)
- 思い切って、ベンチプレス以外の種目を伸ばす
私自身、ベンチプレスで肩を痛めて、2年間やめていた時期があります。 再開してからは、1か月以内に100kg、2か月目には120kgまで挙がりました。 その間にやっていたのが、この3つです。
毎回ベストを狙うと、伸びが止まりやすくなります
ベンチプレスが伸びないという方を見てきて、いちばん多いと感じるパターンがあります。 ジムに行くたびに、その日の最大重量に挑んでいることです。
気持ちはよく分かります。挙がった日は嬉しいし、伸びている実感もある。 ただ、これを毎回続けると、2つのことが起きます。
ひとつは、疲れが抜けないまま、次の挑戦を迎えること。 限界の重さは、身体への負担もいちばん大きい重さです。 疲れたまま挑めばフォームが崩れ、崩れたまま挙げることになります。 ケガにつながりやすいのは、ここです。
もうひとつは、練習の回数を増やせないこと。 毎回出し切っていると、回復に時間がかかります。週に何回もはできません。
野球にたとえると分かりやすいと思います。 ホームランを量産したいからといって、毎日ホームランだけを狙って打つ人はいません。 素振りをして、筋力トレーニングをして、フォームを固める。 ホームランは、その積み重ねの結果として出るものです。
ベンチプレスも同じです。 最大重量は、練習するものではなく、練習の結果として出るものです。
「毎回最大重量に挑む」やり方そのものを比べた研究は、私の調べた範囲では見当たりませんでした。 近いものとして、セットを毎回限界まで追い込むかどうかを比べた研究があります。 それらをまとめると、限界まで追い込んでも、余力を残して止めても、筋力の伸びに差は見られませんでした。 セット数などの練習量をそろえずに比べた研究では、 余力を残したほうが、かえって伸びていました。
出し切らなくても、筋力は伸びる。 それなら、出し切らずに済ませたぶんを、練習の回数に回したほうがいい、というのが私の考えです。
※Grgic ら(2022年)のメタ分析(筋力は15研究・394名、いずれも若い成人)。「追い込むと伸びない」という意味ではありません。追い込まなくても筋力は伸びる、という結果です。
私は40kgで肩を痛めて、2年間ベンチプレスをやめました
少し、私の話をさせてください。
筋トレを始めたばかりのころ、私も最初にベンチプレスをやりました。 でも、フォームが分かりませんでした。 40kgがとても重くて、それでも挙げようとして、肩を痛めました。
肩のインピンジメントです。 腕を上げたときなどに、肩の骨(肩峰)の下で腱などが挟まって痛む状態です。 ベンチプレスをやると、痛い。だから、やめました。
※肩の痛みが続くときは、自己判断でトレーニングを続けず、整形外科を受診してください。
それ以来、ベンチプレスには苦手意識がついてしまい、2年間、一切やりませんでした。
代わりにやっていたのは、ダンベルプレス、ダンベルフライ、マシンのチェストプレスです。 ベンチプレス以外で、胸を鍛える種目ばかりでした。

※写真は当方の会員さんで、筆者ではありません。ご本人の了解をいただいて掲載しています。
再開して1か月で100kg、2か月目に120kg
2年たって身体ができてきたころ、改めてベンチプレスに挑戦しました。 今度は、正しいフォームで。
すると、1か月もしないうちに100kgが挙がりました。 2か月目には、120kgです。
その1〜2か月は、週3〜4回ベンチプレスを練習していました。 ただし、毎回ベストに挑んでいたわけではありません。 軽めで10回のセットと、重めで3〜5回のセットを混ぜながら、 一緒に働く筋肉も鍛えていく。そういうプログラムを回していました。
※これは私の場合です。2年間ほかの種目で身体をつくっていたあとのことで、誰でも1か月で同じだけ伸びるという話ではありません。
伸びたのは、ベンチプレス以外で身体ができていたから
振り返ると、理由ははっきりしています。
2年間、ダンベルとマシンで、胸・肩・腕の筋肉を育てていました。 挙げるための筋肉は、もうついていた。 足りなかったのは、それをバーベルで出し切るためのフォーム(技術)だけです。 だから正しいフォームを覚えた途端に、一気に数字が出たのだと思います。
筋肉の量と、挙げられる重さの関係は、研究でも確かめられています。 トップレベルのパワーリフターを調べた研究では、 ベンチプレスを含む記録と、体脂肪を除いた身体の重さ(除脂肪量)の間に、強い関係がありました。
※Brechue と Abe(2002年)。エリート男性パワーリフター20名を一時点で測った研究です。関係が強いことは分かりますが、「筋肉を増やせば必ず挙がる」という因果まで示したものではありません。
ベンチプレスをやりこむことだけが、ベンチプレスの上達法ではありません。
伸び悩んだらやること① プログラムを組んで、練習の回数を増やす
毎回ベストを狙うのをやめると、何が変わるか。 練習の回数を増やせるようになります。
ベンチプレスは、筋力だけで挙げる種目ではありません。 肩甲骨の寄せ方、バーを下ろす位置、足で床を押すタイミング。 技術の種目でもあります。 そして技術は、触れた回数だけうまくなります。
研究でも、週1回より週2回、3回、4回と、回数が多いほど筋力が伸びやすい傾向が出ています。 ベンチプレスのような、上半身の、いくつもの関節を使う種目では、特にはっきりしていました。
ただし、ここは正確に書いておきます。 1週間の練習の総量(セット数の合計)をそろえて比べると、回数による差は小さくなり、統計的な差は見られなくなります。 つまり、回数を増やす意味は「回数そのもの」よりも、 1回あたりに詰め込まずに、週の練習量を増やせることにあります。
毎回限界まで出し切るやり方では、これができません。 プログラムを組むから、回数を増やせる。 順番はこちらです。
※Grgic ら(2018年)のメタ分析(22研究)。対象の多くはトレーニング未経験者です。週の総量をそろえた研究に限ると、頻度による差は統計的に有意ではありませんでした。アメリカスポーツ医学会(ACSM)が2026年に改定した指針でも、筋力を高める条件のひとつに「週2回以上」が挙げられています。
私のところでは、ベンチプレスが未経験の方に、 3か月で40kgを10回、半年で体重と同じ重さを目標にしたプログラムを組んでいます。 未経験から始めた男性の会員さんは、ほぼこの目標に届いています。
※未経験から始めた男性の会員さんの場合です。個人差があり、全員が同じ期間で届くわけではありません。
ネットでは「体重と同じ重さ」が、普通の人の平均のように語られがちです。 実際には、長くトレーニングを続けてきた人たちの記録が元になった数字です。 そこを半年で目指せるのは、プログラムで練習を積むことと、最初にフォームを直すことの両方があるからだと考えています。
※「平均は体重と同じ」がどこから来た数字なのかは、ベンチプレス40kgの記事に詳しく書きました。
プログラムの一例(週3回)
一般的な組み方の例です。
| 日 | 内容の例 |
|---|---|
| A | 重い日 ベンチプレスを重めで3〜5回×数セット。限界の1〜2回手前で止める + 上腕三頭筋 |
| B | 軽い日 軽めで10回×数セット。同じ軌道・同じ速さで繰り返す + 足上げベンチ + 三角筋前部 |
| C | 角度を変える日 ナロー・ワイド・ダンベルプレスなど + フライやマシンのチェストプレス + 上腕三頭筋 |
※あくまで一例です。重さ・回数・セット数は、今の記録や身体の状態、使える時間によって変わります。私のところでは、一人ひとりに合わせて組んでいます。
伸び悩んだらやること② 正しいフォームを習う。早いほうがいい
私が肩を痛めたのも、2年後に一気に伸びたのも、分かれ目はどちらもフォームでした。
フォームは、癖がつく前に習うほど楽です。 間違ったフォームで何百回も挙げてしまうと、その動きが身体に染みつきます。 直すには、そのぶん時間がかかります。
いちばん多いのは、バーの位置が高いこと
私が見てきた限り、特に始めたばかりの方に、いちばん多い癖があります。 バーの位置が高い(頭側にある)ことです。
バーが頭側(首寄り)に下りると、肘が横に大きく開いた形になりやすくなります。 「胸で押している感じがしない、肩と腕で押している」という方の多くが、この形です。 肩への負担が増えやすく、インピンジメントなど、肩を痛める原因のひとつになりうると考えられています。
直し方はシンプルです。 ラックからバーを外したら、まず胸の上の、押すべき位置まで運ぶ。 そこから、まっすぐ上下に動かす。

私のところでは、未経験の方にまずここを直してもらいます。 バーの位置が決まると、それだけで挙がる重さが変わります。 さきほどの3か月・半年の目標に届いた会員さんの多くが、最初にここを直しています。
※個人差があります。バーの位置を直せば誰でも目標に届く、という意味ではありません。
始めたばかりの方の話に聞こえるかもしれませんが、長く続けている方でも、一度確かめてみる価値があります。 スマホで横から動画を撮るだけでも、バーがどこに下りているかはすぐ分かります。
フォームの練習は、重さを落としてやります。 重い重量では、崩れないように耐えるだけで精一杯で、動きを直す余裕がありません。 軽い重さで、同じ位置から同じ軌道を何度も繰り返す。重量を伸ばしたいときほど、ここに時間を使う価値があります。
自分のフォームは、自分ではなかなか見えません。 できれば一度、人に見てもらうのがおすすめです。


