残業が続く週は、夜のジムの予定から崩れていきます。
19時に行くつもりが21時になり、会社を出るころには閉まっている。多くのパーソナルジムでは、当日のキャンセルで1回分の料金が消える。それが何度か続くと、もういいか、となってしまいます。
続かないのは、あなたの意志が弱いからではありません。残業や会食は、たいてい急に入ります。急に入るものと同じ時間帯に筋トレを置いているから、毎回そちらに押し出されてしまうだけです。
残業が多くても、不規則でも、続ければ身体は変わります。そのために、私が伝えたいことはひとつです。
気合いではなく、仕組みで続けてください。
予定が崩れにくい朝か昼に、先に枠を入れておくこと。崩れた日でも無駄にならないジムを選ぶこと。この2つがそろうと、残業の多い人でも筋トレは続けられます。
残業が多い人の筋トレが止まる、いつもの順番

止まるときは、だいたい同じ順番をたどります。
- 残業や会食が、当日になって入る
- 夜に入れていたジムの予定が崩れる
- なんとか行けても、深夜で閉まっている。予約していた枠のぶん、お金が無駄になる
- それが何度か続いて、行かなくなる
国の調査でも、仕事の忙しさは運動を妨げる大きな理由です。この1年で週1日以上運動できなかった人に理由を聞くと、28.6%が「仕事が忙しいから」を選んでいました。週1日以上やりたいのに、いまは週1日未満の人に、運動が減った・増やせない理由を聞くと、「仕事が忙しいから」は全体で38.5%、40代の男性では63.1%でした。
※スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和7年度)。18〜79歳のWebモニター40,000人への調査です。週1日以上運動できなかった理由の単独の1位は「面倒くさいから」(31.8%)でした。
私は、残業の多い方の「忙しい」は、時間がまったく無いということではないと考えています。夜の時間を、自分の都合で決められないだけです。 だから、置き場所を変えます。
続けるには「強制力」と「修正力」の両方が要る

仕事が不規則な人が筋トレを続けるには、2つの力が要ります。
- 強制力:決めた時間になると、いつの間にかジムにいる状態をつくる力
- 修正力:予定が崩れたときに、無駄にせず、すぐ戻せる力
強制力のほうは、研究にも表れています。イギリスで新しくジムに入会した1,726人の入館記録を追った研究では、入会して3か月目に「同じ施設・同じ曜日・近い時間帯」で通っていた人ほど、1年目の終わりごろもよく通っていました。
※Rand ら(2020年)。入館ゲートの記録を後から分析した観察研究です。
ただし、固めすぎると逆効果になります。アメリカの大企業の社員2,508人を対象にした実験では、「毎日決めた2時間の枠内に来たら報酬」の人たちのほうが、「いつ来ても報酬」の人たちより、ジムに行く回数が少なくなりました。報酬がなくなったあとも、少ないままでした。
※Beshears ら(2021年)。勤務先のジムを使ったフィールド実験です。
枠は決める。でも、ずらせるようにしておく。 この2つがそろって、はじめて続きます。
強制力:朝か昼休みに、筋トレの枠を先に入れてしまう
残業も会食も、ほとんどが夕方から夜に入ります。逆に、朝や昼休みの予定が当日になって変わることは、あまりありません。
だから、筋トレの枠は朝か昼に置きます。会議と同じように、カレンダーに先に入れてしまうのがおすすめです。
朝は仕事や付き合いの予定が少ないので、運動を続けやすいのではないか。この見方は、専門誌の総説でも示されています。ただ、朝のほうが続くと言い切れるだけの研究は、まだそろっていません。
※Schumacher ら(2020年)の総説。過体重・肥満の成人を対象にした研究をまとめたもので、根拠の多くは観察研究です。著者自身も、十分な人数のランダム化比較試験が必要だと書いています。
朝トレのいいところ。頭がすっきりして、ジムも空いている
私も、朝に筋トレをしていた時期があります。
朝に身体を動かすと、頭がすっきりして、その日一日を有意義に過ごせます。そして何より、ジムが空いています。
競技を始めてからは、強度を上げるために1〜2食とってから練習したかったので、夕方に変えました。でも、身体を引き締めたい、少し筋肉をつけたい、というボディメイクなら、朝トレで十分です。
昼休みの筋トレなら、1日の時間は増えない

私のジムには、毎回お昼休みに通っている会員さんがいます。
1回は30〜40分ほど。それでも3種目くらいはできるので、ボディメイクには十分です。もともとある昼休みを使うので、筋トレのために1日の時間を新しく作る必要がありません。その方も、効率よく身体を変えています。
昼休みや退勤後に通っている会員さんは、Google のクチコミにこう書いてくださいました。
仕事の昼休みや退勤後など、空いた時間に通っています。タイパ・コスパともによく、成果も出ているので続けられています。
朝や昼に筋トレしても、効果は夜と同じ?
数か月の範囲なら、ほぼ同じです。朝と夕方に分けて筋トレをした研究をまとめた分析では、筋力の伸びも筋肉の増え方も、時間帯で大きな差はありませんでした。
※Grgic ら(2019年)のメタ分析(11研究)。
一方で、24週間続けた研究では、後半の3か月に夕方のほうが筋肉の増え方が大きかった、という報告も1件あります。
※Küüsmaa ら(2016年)。若い男性42名を4つの群に分け、筋トレと有酸素運動を組み合わせて比べた試験です。
それなら、行けない夜より、行ける朝や昼に続けたほうが、身体は変わっていきます。
ジムは家か会社の近く。30〜40分で終わる形にする

朝や昼は、仕事の前か途中です。使える時間も気力も限られるので、ジムに着くまでの手間とノイズは、できるだけ削ります。私が勧めているのは、次の3つです。
- 家の近くか、会社の近くにする。利便性を最優先にする
- 着替えや荷物の準備がいらないようにしておく
- 30〜40分で終わる内容にしておく
乗り換えがひとつ増える、荷物をひとつ持ち歩く。夜なら気にならないその手間が、朝や昼には行かない理由になります。
※先に紹介した Rand らの研究では、自宅からジムまでの距離と通う回数には、ほとんど関係がありませんでした。ただし、職場の場所は調べられていません。ここに書いたのは、私が見てきた範囲での考えです。
1回30〜40分でも、筋肉はつく?
つきます。時間がない人向けの筋トレをまとめたレビューでは、1つの部位につき週4セット以上を目安にしています。次の3種類から1つずつ選べば、全身をひと通り鍛えられます。
- 脚の種目:スクワット、レッグプレスなど
- 押す種目:チェストプレス、ショルダープレスなど
- 引く種目:ラットプルダウン、ロウ(ケーブルやマシンで手前に引く種目)など
※Iversen ら(2021年)のレビュー。6〜15回で限界がくる重さを使うことが前提です(軽い重さなら限界近くまで)。セット数が多いほど伸びは大きくなりますが、少なくても伸びます。
休憩をとりすぎない(始めたばかりなら1〜2分)、2つの種目を交互に行う。そうすれば、時間はさらに縮められます。
- 週2回なら:3種目を1回に2セットずつ
- 週1回なら:3種目を1回に4セットずつ
どちらも、それぞれの種目が週4セットになり、目安を満たせます。週2回の形なら、昼休みの30〜40分にも収まる量です。


